引きこもりに悩んでいる人・家族とどうしても癒着してしまう人は村上龍の”最後の家族”を読んだらいい

村上龍の”最後の家族”

 どうしても家族や親の内面化された価値観から逃れられない、ベタベタした人間関係を築いてしまう。そんなひとにぜひ読んでいただきたいのが村上龍の”最後の家族”です。

 

最後の家族 (幻冬舎文庫)

最後の家族 (幻冬舎文庫)

 まあ、あらすじなんかはAmazonで読んでいただくとして、この小説の面白いところは”家族との絆が一時的に薄れることによって、それぞれが個人として自立し始める”というところにあります。よくありがちは”家族のおかげで困難を乗り越えられた!やっぱり家族は大切!”みたいな構成になっていませんし、ありきたりに泣かせてきたりもしません。登場人物それぞれが状況をある程度客観的に分析し、自分にとっての最適解はなんなのかを模索していく。あくまで”個人としての実現”に目を向けた作品になっています。

この作品があまり売れていないということは

 この作品はもっと評価されて、というか、社会的に需要があってもいいのではないかと思います。日本社会特有のベタベタした人間関係から逃れるために必要なメンタリティ、それを獲得するに至る行動が、一例とはいえ実に具体的に描かれているからです。家族という”社会の最小単位”をモチーフにしているのもいいですね。しかし現状こういった、”あるコミュニティから離れて個人が自立する”というテーマの小説はあまりみかけない、まあ少なくとも主流ではないような気がします。ということはつまり”自立に至る物語”には依然として需要があまりないということなのでしょうか?あるいは僕がそういった類の小説にたまたまあまり巡り合っていないということなのでしょうか?